多焦点眼内レンズとは
多焦点眼内レンズは、遠距離と近距離に焦点が合わせられるので、単焦点眼内レンズに比べて日常生活で眼鏡への依存をかなり軽減できます。近年では、乱視矯正が可能な多焦点眼内レンズも開発されています。
多焦点眼内レンズによる白内障手術
当院では、日本眼科学会専門医による白内障手術を行っております。眼内レンズは、単焦点眼内レンズと複数の焦点にピントを合わせることができる多焦点眼内レンズからお選びいただけます。
老眼治療
老眼は加齢によって水晶体の弾力が弱まりピント調節機能が衰えることで近くのものが見えにくくなる現象です。個人差はありますが、一般的に40歳を過ぎた頃から少しずつ老眼が進行していきます。
老眼は加齢によるものだからとあきらめる方も多くいらっしゃいましたが、遠近の両方にピントが合う多焦点眼内レンズを用いた白内障手術をおこなうことで、眼鏡の煩わしさから解放され快適に日常生活を送ることが可能となりました。
多焦点眼内レンズの注意点
多焦点眼内レンズは、その光学的特性に伴うデメリットもあります。
- 夜間や暗い場所で、街灯や車のライトなどがにじんで見えたり、まぶしく見えたりすることがある。
- 薄暗い場所で文字などが見えにくいことがあり、細かい文字であれば老眼鏡が必要になることがある。
- 視力が安定するまでに半年程度の時間を要することがある。
夜間の運転を職業とされる方や、色の濃淡の判別が必要な職業の方には適していません。
性格が神経質な方や完璧主義な方には不向きだとも言われます。
また目に他の病気(角膜疾患、緑内障、網膜疾患など)を有している方は適応から外れます。
多焦点眼内レンズを希望される患者さんへ
多焦点眼内レンズを用いた白内障手術をおこなっても、若い頃の目のようにどの距離にも焦点が合わせられるわけではありません。眼鏡をかけても良いのであれば、単焦点眼内レンズの方が良い場合もあります。
多焦点眼内レンズのメリットとデメリットをよく理解していただいた上で、手術を受けていただくことが大事です。
多焦点(遠近両用)眼内レンズについて
テクニスシナジー
テクニスシナジーの構造
テクニスシナジーは、従来の2焦点眼内レンズのテクニスマルチフォーカルと、焦点深度拡張型多焦点眼内レンズのテクニスシンフォニーを組み合わせた連続焦点型レンズです。
手元など近方の見え方を重視したテクニスマルチフォーカルと、中間距離の見え方を重視したテクニスシンフォニーの、それぞれの良いところを組み合わせた設計のレンズとなっています。
まぶしさを低減するテクニスシンフォニーの特徴を兼ね備えているので、ハロー・グレアも日常生活に支障がないレベルまで抑えられています。

テクニスシナジーの特徴
- 2焦点眼内レンズとEDOFレンズ(焦点拡張型レンズ)の優れた部分を融合させた最新のハイブリット眼内レンズです
- 他の多焦点眼内レンズと比べて、手元の見え方も優れていると報告されています。
- 紫波長の光をカットすることでハロー・グレアが抑えられています。
- 乱視矯正にも対応しています。
- 眼全体の色収差が低減され、屋内等の暗所でも視力が良好です。

ハロー・グレアについて
光がにじんで見えるハローや強い光をまぶしく感じるグレアという現象は、どの眼内レンズでも同様に起こります。特に多焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズと比べて遠近にピントを合わせる設計によってハロー・グレアが強く起こりやすいといわれていますが、テクニスシナジーは、レンズの構造から紫波長の光をカットすることでハロー・グレアを抑えられる工夫が施されています。
ハロー・グレアの症状は個人差がありますが、だいたい3ヵ月程で慣れていくことが多いといわれています。

選定療養について
選定療養は患者様が一部追加費用をお支払いすることで、保険適応外の治療を保険適用の治療と併用して受けることができる制度です。
多焦点眼内レンズを使用した白内障手術においても、2020年4月からこの制度を利用することが可能となりました。
従来は、全額自己負担となっていた多焦点眼内レンズの手術ですが、手術自体は単焦点眼内レンズの時と同様に保険適応内で受けることができます。患者様がお選びいただいた多焦点眼内レンズの費用と追加で行う検査は保険適応外の自費となります。
当院は、多焦点眼内レンズ(テクニスシナジー)の白内障手術を行う選定療養施設基準を満たしているため、この制度をご利用いただけます。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

テクニスシナジーの費用について(選定療養)
費用 | |
---|---|
テクニスシナジー(片眼) | 300,000円(税込) |
テクニスシナジートーリック(片眼) | 350,000円(税込) |
高額療養費制度
月初から月末までの1ヶ月内に、一定の金額を超えて医療費を支払った場合に、超えた医療費を健康保険組合から払い戻される制度のことです。
保険が適応される医療費のみが対象です。選定療養にて多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を受けられた場合、保険適応の白内障手術代金の自己負担額は該当しますが、自費で追加負担した多焦点眼内レンズの治療費は該当しません。
医療費控除
1/1~12/31までの1年間に、本人や同一生計の家族が医療費を支払った場合、一定の金額を所得から差し引く制度です。
医療費控除の対象は保険適応外の医療費も含まれます。所得税が軽減される制度で、多くの場合、医療費が10万円を超えると利用できます。
また高額療養費として支給を受けた金額は除かれます。選定療養にて多焦点眼内レンズを選択した追加代金も対象となります。